掛け算は小学校低学年で習いますが、「掛け算の意味」をきちんと教わるのは5~6年生の段階です。5年生の「1あたりの数(単位数量)」とその発展形の(6年生の)「速度」のところです。ここでの学習を経た段階で

3×4と4×3は意味が違うのだということを「なんとなく」でも、わかっていないといけません。どちらも答えは12ですから「できる数学」の立場ではどちらも同じということになりますが、「わかる数学」の立場では厳密に区別されていて、掛けられる数は「単位数量」で、掛けるほうの数は「単位数」なのです。「距離」を求める公式は、「速さ」×「時間」であって、「時間」×「速さ」と答えると先生から「それはチョット違うヨ」と注意を受けるはずです。ここでの理解の違いが、中学、高校での数学的センスの有無になって現れてきます。

 

  掛け算と割り算は表裏一体ですから、上の考え方の違いが割り算にも表れてきます。12÷3=4には考え方が2通りあって(当たり前ですが)「12を3つに分けたひとつ分が4」(等分除)「12の中に3が4こある」(包分除)の2通りです

 

○○○○|○○○○|○○○○  ⇐ 等分除のイメージ(4×3の逆算)

○○○|○○○|○○○|○○○ ⇐ 包分除のイメージ(3×4の逆算)

 

子供たちはこの2つの考え方を駆使し、使い分けながら、より複雑な問題に対処しています。2つのイメージの使い方に偏りがある子は、文章問題が苦手だったりするのですが、その偏りは外からはなかなか発見できません。どちらも表面上は12÷3=4なのですから、「それができれば問題なし」として通過してしまうのです。

ところで、上の図のように2つの割り算の考え方は全然違うのに、どうして同じ1つの式で表すのでしょうか?このことにも実はちゃんとした理由があって、高校での数学(個数の処理)を経て何となく理解するようになります。(現状はなかなか理解せずに、大多数はそのまま卒業してしまいますが…)

 

やり方を習得したうえで、「なぜそうするのか」を知ることが、より高度な数学を理解する上で非常に大切だということを、お分かりいただけたでしょうか。これはあらゆる数学のジャンルについて言えることで、「分数の割り算はどうしてひっくり返して掛けるのか?」とか「ある数にマイナスの数を掛けるとなぜ符号が逆転するのか?」といったことはすべて理由があり、高度な高校の数学へと直結しています。